結婚前夜
ぼんやりと外の景色を眺めて妄想をしていると、不意に中島課長の声が聞こえた。

「……か?」

課長の声に驚き、現実の世界に引き戻される。
ビクッと私の肩が動いて、課長に視線を向けると、無表情ながらも彼は私を見つめていた。

「…驚かせてすまない。
今日はここに来てくれてありがとう」

課長の頬が、心なしかうっすらと色付いている。
…もしかして、照れてる?

私は俯きながら、首を縦に振り、肯定の意思を示した。

またしばらくの間、テーブルに沈黙が流れたけれど、それを破ったのはカフェの店員さんだ。

「お待たせ致しました。ご注文の品でございます」

にこやかな笑顔を振りまいて、テーブルの上にそれぞれが注文した品をセットすると、颯爽と去って行った。

中島課長に促されて、食事を取る。
お互い黙々と、ただひたすら私は目の前にあるパスタを食べていた。

課長も、黙々とカレーを食べていた。
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