契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
彰さんの友人だという平川さんに指定された場所は、会員制のイタリアンレストランだった。
席はすべて完全個室で、ほかのお客さんと顔を合わせることが一切なく、なんだか秘密めいた雰囲気。
平川さんより先に到着した私と彰さんは、高級ホテルのようなラグジュアリーなインテリアに囲まれた個室に通されて、彼を待っていた。
「す、すごいお店ですね……」
庶民丸出しで、部屋中をキョロキョロ見回す落ち着かない私とは違い、彰さんはどっしり椅子に座っている。
「そうだな。接待だとか政治家の会合、人目を忍ぶ恋人たちにはちょうどいいんだろう。〝会員制〟というシステムは、俺はあまり好きじゃないけど」
「どうしてですか?」
「道重堂は、客の社会的、経済的地位なんて関係なしに、よりよい商品やサービスを提供するというのが創業当時からの方針だ。実際そうやって、多くの人に愛されてきた。先代の社長たちが貫いてきたその方針を、俺も守っていきたい。常にそう思ってるから」
彰さんが仕事に対する思いをこんなふうに語ってくれるのは初めてで、そのキラキラした瞳にときめきを感じた。