契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~

……そうだ。私が道重堂のファンになったのも、理由は和菓子の美味しさだけじゃない。

ひとつ百円前後で買える、普段のお茶うけ用のお饅頭や羊羹。

大切なお呼ばれに持参する、見た目も美しい上生菓子。

どれをとっても上質な原材料が使われ、職人さんの技巧にも手抜きがない。

そんな、子どもから大人まで、シーンに合わせて色々な和菓子を楽しむことができるという奢らないおおらかさも、道重堂の魅力なのだ。

胸の内でそんなことを再確認していたとき、ふいに個室のドアが開き、私たちの待っていた人物が姿を現した。

「いや~ごめんごめん、タクシーが渋滞に巻き込まれてさ」

軽い調子で言いながら入ってきたのは、明るい金髪が目を引く華やかな顔をした男性。

服装も、フォーマルなものに着替えてきた私たちとは対照的に、ピンク色のシャツにスキニージーンズいう格好で……とにかく全体的にチャラい。

この浮かれた大学生みたいな人が、vanillaの社長で彰さんの友人である平川さんなの?



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