契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
想像とのギャップで言葉を失っていると、私の姿を見た平川さんは人懐っこい笑みを浮かべて言う。
「彰、誰? この子」
「妻の結奈だ。……お前に紹介しておきたくて連れてきた」
「妻! ……へえ。そうなんだ」
平川さんは私たち夫婦の向かい側の椅子に腰かけつつ、品定めするような目つきで私を眺める。その視線に居心地の悪さを感じつつ、挨拶するために口を開いた。
「初めまして、妻の結奈です」
「どーも。俺は彰のマブダチ、平川叶夢(とむ)でーす」
シルバーのごつごつした指輪だらけの右手を差し出され、気後れしながら握手を交わした。
それにしても叶夢って……いつか彰さんが寝言で呟いた名前と同じだ。あのとき、彰さんは彼の夢を見ていたのだろうか。
「秘書から海外帰りだと聞いたが、どこに行っていたんだ?」
「それは本当に色々。お前んとこみたいに老舗じゃないからどこにもコネがなくてね。人脈作りに奔走してたんだ。おかげで、いい出会いがいくつもあった」
はつらつと語る平川さんに、彰さんは感心しながら頷く。