契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
9.夫婦の距離は近づいて
残りの夏休みは、平穏に過ぎていった。
ふたりで家事をしたり、買い物に出かけたり、なかなか夫婦らしくなってきたんじゃないかと自惚れるくらいに、私たちはうまくいっていた。
一週間後に行われる花火大会に行く約束もし、夏休み最終日にはそのための浴衣を選ぶため、彰さん行きつけの着物店を一緒に訪れた。
「すごく肌触りがいいです……浴衣って結構汗をかいちゃうイメージですけど、生地に自然な凹凸があるからか肌にくっつかないし涼しい」
〝有松絞り〟という伝統技法で染色された薄紫色の浴衣を試着させてもらい、その着心地の良さに感心する。
彰さんは自前の浴衣姿で腕組みをし、姿見に映る私を難しい顔で眺めながら呟く。
「……悪くない。しかし」