契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
納得いかない様子で近寄ってきたかと思えば、下ろしっぱなしにしていた私の髪をまとめ、軽くねじって引き上げ後頭部にくっつける。
「簡単に髪を留められるものはないか?」
彰さんが店の人に尋ねると、「こんなものしかありませんが」とシンプルなヘアクリップを手渡される。
鏡越しの彼は真剣な様子で私の髪をいじっていて、なんだか照れくさい。
「……よし、できた。即席だけど、やっぱり浴衣のときはこうでないとな」
自信満々に鏡をのぞいた彼が、大きな手で露わになった首筋をなでる。普段は隠れている場所に触れられたくすぐったさで、びくっと肩が跳ねた。
彰さん、もしかしてうなじが見たかったとか……?
心の中だけで思いドキドキしつつ、確かに浴衣の時はアップのヘアスタイルの方が合うなと共感する。
花火大会当日は、ヘアスタイルも気合を入れて頑張ってみようかな。
私はひっそりと決意し、胸を高鳴らせた。