契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
すぐに着られる仕立て上がりの浴衣を選んだので、購入した浴衣をそのまま身に着け店の外に出る。
着物店の面した通りは下町風情が残っていて、ノスタルジックな気分が沸き上がった。私たちは手をつなぎ、からころと下駄を鳴らしながら歩きはじめる。
「楽しいですね、浴衣デート」
「そうだな。……俺は、最近の結奈が、食べているとき以外にもそうやって幸せそうに笑いかけてくれるのがうれしいよ。そろそろ〝二位〟から脱却できたか?ってな」
ちらりと流し目を向けられ、慌ててしまう。
「そ……そういえば、そんな話しましたっけ。今考えるとすっごい失礼でしたね」
当時はまだ恋愛感情がなかったとはいえ、旦那様と和菓子を天秤にかけてランク付けするだなんて。それに、思った以上に早く一位と二位は逆転している。
「別に、その時は素直にそう思ったから言ったんだろ? 俺は、そんなふうにいつでも正直なお前だから惹かれたんだ。うれしい時には笑って、不安な時には表情が曇る。泣き顔はまだ見たことないが、できれば泣かせたくはないな」
「彰さん……」