契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
じんわり温かい感情が胸に広がり、思わず彼をじっと見つめると、その口元がふっと緩んでこう言った。
「俺の言葉ひとつでそんな顔をしてくれる結奈が、愛しくてたまらないよ」
ストレートな愛情表現に、火がついたように顔が熱くなる。絶対に赤くなっているのでパッと下を向くと、隣からはくすくす楽しそうな笑い声が聞こえた。
「照れてるのも、わかりやすいな」
「か、からかわないでくださいっ……」
こんな会話は恥ずかしいけれど、もちろん嫌なわけではない。
彰さんが、好き。その気持ちが際限なくあふれて、胸がパンクしそうだ。
「あ、あそこ! 店先にお饅頭が並んでます! 何か買っていきましょう」
照れくささから逃れるように、私は彰さんの手を引いて目に入った小さな和菓子店へと向かう。
「今日こそ水ようかんにしません? 縁側で食べるって夢、まだ叶えてませんよね!」
「あー……俺は、わらび餅の気分だな。今日は」
彰さんが少し申し訳なさそうに言う。
けれど、言われてみれば陳列されたわらび餅は確かに柔らかそうで、きなこがたっぷりかかった見た目も確かにおいしそうだ。