契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
夏休みが明け、あっという間に慌ただしい日常が戻ってきた。
彰さんも私も仕事が忙しく、本当は家でゆっくり話したいのに、思うように時間が取れずにすれ違ってばかり。
けれど、次の土曜日には、一緒に花火大会に行く約束をしている。
その約束があるだけで、忙しい毎日をこなすモチベーションになっていた。
「なんか最近キラッキラしてますねえ、結奈先輩」
とある平日。取材先から帰り、すぐさまパソコンで記事の作成を始めた私に、後ろを通りかかった花ちゃんがそう声をかけてきた。
「そうかな? 自分ではいつも通りだと思うけど」
「肌ツヤもいいし、仕事も絶好調じゃないですか。なんか新しい企画任されてましたよね?」
花ちゃんに言われて、デスクの上の企画書を手に取りぱらぱらとめくった。
「そうそう。前に私が道重堂の親方にインタビューしたときの記事が評判いいらしくて、冬ぐらいから〝美味しさのプロに聞く〟っていう、インタビューがメインのコーナーを始めるんだって。星付きレストランのシェフとか食品会社の開発担当者とか、とにかく食のプロにインタビューして、興味深い話を聞き出せって言われてる。企画が始まるのはまだ先だから、誰に話を聞くかピックアップする作業すらまだなんだけどさ」