契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~

ちらりと壁の時計を見たら、終業時刻を五分過ぎたところ。

仕事のキリもいいし、今日はこの辺で帰ろう。

そう決めて、デスクの上を片付け始めた時だった。後ろから誰かの腕がにゅっと伸びてきて、先ほど花ちゃんに見せた企画書を取る。

とっさに上司だと思った私は、まだその仕事には手を付けていないと説明するべく、振り返ったのだけど。

「へえ~。面白そうな企画だね。俺もインタビューされてみたいな」

なれなれしい口調で話すその人物は上司などではなく、なぜこんな場所にいるのか謎でしかない。

「ひ、平川さん……?」

私の目の前にいるのは、vanillaの社長で金髪がトレードマークの平川さんだった。彼はふんふん鼻歌を歌いながら、勝手に企画書をめくっている。

「なんであなたがこんな場所に……」

「そんなの、きみに会いに来たに決まってるじゃない」

「はい……?」

まったくもって理解不能だし、私はどちらかというと会いたくなかった。

だって、平川さんは彰さんのことをなぜか敵対視していて、前回会ったときひどい言葉を浴びせてきたんだもの。



< 115 / 244 >

この作品をシェア

pagetop