契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~

あまり好意的じゃない私の視線に気づいても、平川さんはどこ吹く風。

「ねえ、今度俺とふたりで食事でもどう?」

「……お断りします。なんで私とあなたが」

「えー、つまんない。いいでしょ? 彰には内緒にしといてあげるから」

甘ったるい喋り方でしつこく誘われて、困ってしまう。

どうしたらこの人は引き下がってくれるんだろう……。

頭の中でぐるぐるとうまい断り文句を考えていたそのとき。

「道重! ちょっと!」

会議から帰ってきた直属の女上司に呼ばれ、私は平川さんの横をすり抜け彼女のもとへと急いだ。

よかった。天の助け……!

平川さんのもとを離れられたことに安堵し、上司の言葉を待つ。彼女は声を潜めながらも興奮した様子で、ちらちらと平川社長を見ながら言った。

「あれ、vanillaの平川社長じゃない! どうしてここにいるのかわからないけど、あなた親しいなら今度の企画に協力してもらいなさいよ」

「え? いや、それはちょっと……」

まずい。まさかの展開だ……。確かに、平川社長は今度の企画にうってつけの人物ではあるけれど、彼に協力を仰ぐのは気が進まない。



< 116 / 244 >

この作品をシェア

pagetop