契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
「今、vanillaは間違いなく注目度ナンバーワンの洋菓子店よ? その社長である彼なら企画の目玉になるし、売り上げ部数もうなぎ上りに違いないわ!」
そう断言するのと同時に、上司は私の背中をバシッと叩いた。
「いい? 絶対に逃しちゃだめよ!」
「は、はい……」
私は力なく返事をし、とぼとぼ自分のデスクに戻る。そして、私がいない間に勝手に椅子に座り、くるくる回る自由な平川さんに告げる。
「あの……個人的には非常に不愉快で不本意なのですが」
そんな前置きをし、ため息を挟んで本題に入る。
「さっきご覧いただいていた企画に協力していただけないでしょうか? vanillaという新しい会社がここまで広く認知されるようになったのには、平川社長の経営手腕があってこそだと思いますので、その……いろいろお話をうかがえたら助かるのですが」
仕事とはいえ、言いたくないセリフばかりでつい棒読み口調になる。
しかし平川さんはまったく意に介した様子もなく、満面の笑みを浮かべた。
「もちろん! 俺にできることなら協力させてもらうよ。ただし……」
そこで言葉を切った彼が、上目遣いで私を見る。どうしよう。嫌な予感しかしない。