契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
「さっきも言ったけど、食事。付き合ってくれるならね?」
平川さんはそう言って小悪魔的な笑みを浮かべた。
やっぱりそういうことか……。全く乗り気ではないけれど、仕事が絡んでしまっては断るものも断れない。
「……わかりました」
私は渋々承諾し、花火大会の前日、金曜の夜に平川さんと食事をする約束をした。
*
今夜も彰さんの帰宅は遅いらしい。
【遅くなるから先に寝ていて】とスマホにメッセージがあり、私はひとり寂しく夕食と入浴を済ませ、早々とベッドに入った。
しかし体は疲れているはずなのに、どうにも目が冴えて眠れなかった。
たぶん、平川さんのことが心に引っかかっているせいだ。
彰さんを敵視している平川さんだから、妻である私のことも気に食わないはずなのに、どうして一緒に食事なんて。私を使って、彰さんの弱みを聞き出そうとしているとか?
なんにせよ、警戒するに越したことはない。彼の華やかな見た目の裏には、なんとなくドロドロした黒い感情が流れている気がするから……。