契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
「……ただいま。俺も、結奈の顔が見たかったよ」
「彰さん……」
甘く切ない気持ちがこみ上げて、彼にしがみつく力を強くする。
幸せすぎて怖いって、こういうことかな……。
こんなにそばにいて心も通じ合っているのに、好きになればなるほど、彼を失ったら自分がどうなってしまうんだろうって、不安になる。
そのときふと、テーブルの上に置かれたひとつの和菓子に気が付く。
個包装の箱のふたが開いて、可愛いパンダの練りきりが顔を出していた。
「かわいい~! どこで買って来たんですか?」
「いや、これは……倉田の創作だ。結奈をモデルにしたらしい」
「うそ! 光栄すぎるんですけど……!」
私は彰さんの首から腕をほどき、瞳を輝かせてテーブルにかじりつく。
丸々したフォルムのパンダは頬がちょこんとピンク色で、可愛いことこの上ない。
これが私か……。ブタでなくパンダってところに、倉田さんの紳士的な気遣いが感じられてまたうれしいわ。
「食べたかったら、食べていいぞ」
彰さんが勧めてくれるけど、さすがに躊躇してしまう。