契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
「可愛くてもったいないな……。っていうか、彰さんが食べようとしていたんじゃないんですか?」
私が見つけた時にはすでにふたが開いていた。それって、彰さんが食べるためかなって思っていたんだけど。
「そのつもりだったけど、結奈に食べてもらった方がこいつも嬉しいんじゃないかと思って。ま、共食いになるけど」
冗談めかした口調で言って、彰さんはソファから立ち上がる。
「俺、風呂に入ってくるから。結奈はそれ食べて、早く休めよ」
「えっ。彰さんもせめてひとくち」
「大丈夫だ。俺は結奈の作ってくれた飯があるから」
彰さんは、ダイニングテーブルの上にあるラップのかかった夕食をちらりと一瞥し、リビングから出て行ってしまう。
私はどこか寂しいものを感じて、パンダと顔を見合わせながら胸の内で呟く。
最近、なんとなく感じるんだけど……彰さんと一緒に和菓子や甘いものを食べようとすると、いつも彼がぎこちない態度を取る瞬間がある。