契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
葉山のプリン店でもそうだった。それに、水ようかんかわらび餅かで彰さんが必要以上に謝ってきた、浴衣デートのあの時も。
だからどうという訳じゃないんだけど……少しだけ気になるな。
ぐるぐる考えつつ、せっかくなのでパンダをいただくことにする。
お行儀が悪いけれど素手でパンダをつかんで、口に入れる直前に「ごめんね」と言ってから半分だけかじってみる。
歯触りはもっちり、けれど口どけはよく、白餡のまったりした甘さが口中に広がる。
この絶妙な美味しさ……さすがは道重堂の親方だ。
倉田さんの腕に感心するとともに、道重堂という店の素晴らしさを再確認する。
「絶対、潰させたりしないんだから……」
思わず口から漏れたのは、平川さんに向けての宣戦布告。
余計な心配をかけたくないから彰さんには相談しなかったけれど、今度の食事でまた失礼な発言をされたら、彼に代わって私が毅然とした態度を取ろう。
道重堂も彰さんも、あなたなんかに負けたりしない――って。