契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
「冗談なら笑えるのにしてください」
「いやいや、冗談じゃないよ。初めて見た時から可愛いと思ってたんだ。だからきみの勤務先まで調べて、会いに行ったんじゃない」
胡散臭い口説き文句を並べられて、ますます私の顔が険しくなる。
私、この人に名刺を渡したりしなかったはずだけど、いったいどうやって勤務先を調べたんだろう。探偵か興信所?
どちらにしろ、自分の個人情報を覗き見られるのは気味が悪い。
「……何が目的ですか?」
警戒心を張り巡らせながら聞くと、平川さんは残念そうに苦笑した。
「全然信用してくれないんだね。本当にひと目惚れなんだけどな。……まぁ、しいてほかの目的を挙げるなら……」
平川さんは一瞬考えるそぶりを見せ、それから突然鋭く細めた瞳で私を射抜く。
「彰ばかりが幸せになるのを、阻止したいから」
抑揚のない声で、突如彰さんへの悪意をむき出しにした平川さんに、どくんと心臓が重い音を立てた。
「どうしてそんなに彰さんを目の敵にするんですか?」
二人の間にいったい何があったというの?