契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
「きみのこと、ますます欲しくなった。こんな安い店に連れてきても文句ひとつ言わず、しかも全部の料理をうまそうに平らげてさ。……俺、食べ残すやつとか大っ嫌いなんだよね」
「は、はぁ?」
な、なぜそうなるの!? 平川さんってやっぱり意味不明……!
しかも、私が熱弁した彰さんへの愛情の話は無視して、食べっぷりだけ褒められても、どう反応したらいいのよ!
私はテーブルの反対側でたじろぐけれど、平川さんはどんどん攻め入ってくる。
「名前……結奈だっけ? 明日の夜、花火大会あるだろ。それ、俺と一緒に行こう」
「や、やですっ! その花火大会は、彰さんと一緒に行く約束をしてるんですから!」
「ふーん。そう……残念だな」
〝残念だ〟と言いつつ、諦めるそぶりはなく顎に手を当てて真剣に考えこむ平川さん。
何を考えているんだろう……また変なことを言い出しそうで怖いよ。
びくびくしながら様子をうかがっていると、平川さんが不意にニッと口角を上げる。その表情は悪魔の微笑みにしか見えず、背中を冷や汗が伝う。