契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
この場にいたらますます不愉快な気分になりそうなので、話が途切れたタイミングで素早く席を立った。
しかし、そのときちょうど追加注文していた餃子がテーブルに届き、平川さんがちらりと私を見上げて「食べないの?」と聞く。
もう、間が悪いなぁ……。
ちょっとした苛立ちを感じつつも、注文したのはほかでもない自分。けれど再びテーブルにつく気分にはなれず、ダメもとでそばにいた女性店員に尋ねた。
「これ、持って帰ってもいいですか?」
「はい。構いませんよ。今包みますから少々お待ちください」
女性店員は親切に承諾してくれて、餃子をパックとビニールに入れてくれた。
笑顔でそれを受け取って、その後わざとぶすっとした表情をつくって平川さんを振り返る。
「では。ごちそうさまでした」
「いいえ。また、明日の夜ね~」
にっこり微笑んで手をひらひら振る平川さんに、私はぷいっと顔を背けて店を後にした。
*
「ただいま……」
疲れた声で言いながら、玄関で靴を脱ぐ。そこには彰さんの革靴もすでに置いてあり、部屋の明かりもついていた。
今日は仕事が早く終わったのかな?
途端に気分が浮き立った私は、早足で廊下を突っ切るとそうっとリビングを覗いた。浴衣姿の彰さんが、ソファに座っているのが見える。