契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
なにか、私を安心させてくれるような会話が出ないだろうか。抑えきれない胸騒ぎを抱えながら、必死に期待したけれど。
「そりゃ、一緒に暮らした仲だ。わかるよ、お前のことは」
その言葉が決定的に私を打ちのめし、頭が真っ白になった。
――ダメ。もう、聞いていられない。
私はきちんとドアを閉めるのも忘れ、後ずさりするようによろよろリビングから離れると、そのまま寝室へと向かった。
一緒に暮らした仲? 彰さんは前に、誰かが家で待っているのは苦手だと言っていたのに? あれは、嘘だったの……?
寝室に入ると、持っていたバッグと餃子の袋を床に落とし、電気も付けずにベッドに倒れこんだ。うつぶせの顔を枕に押し付け、声を殺して泣く。
どうしてなの、彰さん。私との夫婦生活では物足りませんか……?
私が彼を想うのと同じくらい、彼も私を想ってくれていると信じていたのに……。
悲しみに打ちひしがれて泣き続けていたそのとき、ガチャっとドアが開いて、私は心臓が止まるかと思った。
「結奈? 帰ったのか?」
来ないで……。みっともない泣き顔、見られたくない……。
私は寝たふりを決め込み、彼が去るのを待つ。