契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
「着替えもせずにすぐ寝るなんて……酒でも飲んできたか、よっぽど疲れてるんだな」
しかし、呟きながら部屋に入ってきた彰さんは、あろうことか私のベッドに腰かけた。
ぎしりとスプリングの音がして、それから優しく私の背中をさする手のぬくもりを感じた。
「ちゃんと、話さなきゃな……。本当のこと、お前に」
いつもなら心地よく感じる彼の低い声が、今の私には切なく聞こえてしまい、こらえていたはずの涙がまたじわりと目尻を濡らす。
私は聞きたくないです、本当のことなんて。あなたが私でなく、マリアさんという女性を愛しているだなんて……聞きたくないよ。
「おやすみ、結奈」
そうして私の髪に触れるだけのキスを落とし、彰さんの足音が離れていく。
その途中、床に落ちていた餃子の袋に気づいた彼が、ガサガサ音をさせて中を確認し、ふっと笑うのが聞こえた。
「帰ってきてからもまた食べようと思ってたのか? まったく、結奈らしいな」