契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
翌朝目を覚ました私は、彰さんが起きる前にシャワーを浴びて、冷たい水で何度も顔を洗った。
しかし、まぶたの腫れはまったく隠せていない。目の下のクマもひどいし、これじゃまるで本当にパンダだ。
「泣いたの、バレバレだよね……」
洗面所の鏡の前でどんより自分の顔を見つめていたら、寝室の方で物音がするのが聞こえた。
やばい、彰さん起きちゃった……。どんな顔で顔を合わせたらいいのか迷っているうちに、彼の足音が近づいてきて、外側から洗面所のドアが開いた。
「お、おはようございます」
とりあえず、ぎこちない笑顔を作ってはみたものの。
「どうした結奈、その顔」
寝起きでぼうっとしているはずの彰さんが瞬時に顔を険しくし、近づいてくる。
そうだよね。笑顔で誤魔化せるわけないよね……。
「まさか、泣いたのか? 誰に泣かされたんだ?」
ガシッと肩を掴まれて問い詰められるけど、「あなたです」なんて言うわけにもいかず、とっさに口から出まかせを言った。