契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
「ずるいよ、彰さん……」
壁に背中を預け、そのままズルズル床に座り込んだ私はぽつりとこぼした。
彼の瞳が別の人を見ているかもしれないと知っても、愛しい気持ちは募るばかりで、もう後戻りなんかできない。
今日の花火だって……やっぱり楽しみだよ。
ほかの誰でもなく、彰さんと見たい。一緒に浴衣を着て、手をつないで。同じものを見て〝キレイだね〟って、笑い合いたい。
「……言おう。正直に」
自分の心がどれだけ彼を求めているのか思い知らされた私は、ひとつ決心をした。
もし彰さんに別の好きな人がいたとしても、私はあなたが好きで……好きで好きでどうしようもないってこと、ちゃんと伝えよう。
その結末が悲しいものだとしても……きっと、後悔は残らない。
ただ、花火を楽しむ間だけは夢を見ていたい。
彰さんが私を見ているって、錯覚していたい。
だから、伝えるのは花火が終わってからにしよう。
……それまでに覚悟を決めなきゃ。