契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
11.甘い戯れにほだされて
昼間のうちに家事を済ませて、夕方の早い時間から身支度を始めた。
着付けに慣れている彰さんはパパっと着替えてしまったけれど、メイクも髪型もいつもより気合を入れ、なおかつ着付けに不慣れな私は一時間以上かかってもまだ終わらない。
それでも伊達締めまでは結べたので、あとは帯を締めるだけ。
寝室の姿見の前でああでもないこうでもないとあたふたしていると、ドアの外から彰さんの声がした。
「苦戦してるみたいだな。手伝おうか?」
「だ、大丈夫です! あと少しなんで!」
「無理にひとりでやると、あとで着崩れるぞ?」
彰さんはもっともな忠告をしてくれるけど、彼に手伝ってもらうのは私のプライドが許さなかった。
「大丈夫です。もう少しだけ、リビングで待っててください」
彰さんにそう告げると、私は神経を集中させて帯を巻き始めた。
今日はひとりでヘアメイク、着付けをして、いつもと違う自分を彰さんに見せて、きれいって思われたい。
なのに手伝ってもらったら、手品のタネを明かすみたいなものだもの。
……頑張るのよ、結奈!