契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
「ど、どうでしょうか?」
和服を着こなすのが得意な彰さんに比べ、私はビギナー中のビギナー。
さすがに襟の合わせ方とかは間違っていないはずだけど、緊張しながら彼の反応を待つ。
「結奈」
やがて目の前で立ち止まった彼が、私の名を呼んだ。そして、額にかかる長めの前髪の隙間から真剣な瞳がのぞき、視線が絡んだその時。
「苦労して着てもらったところ悪いが、脱がせてもいいか?」
「……へ?」
予想外の反応に、間抜けな声が出る。脱がせるって……なに? 私、そんな変な着方しちゃってる!?
慌てて自分の姿を眺めまわしていると、彰さんに手首を引かれて、ぎゅっと抱きしめられた。
戸惑って目を瞬かせるだけの私に、彰さんが熱っぽい低音でささやく。
「鈍いな。襲いたくなったってことだよ」
「お、襲……っ」
彼の欲情を感じさせる言葉に、あり得ないほど心臓が飛び上がって、顔が火照りだす。
これは、いつかは醒めてしまう夢かもしれない。それでもやっぱりうれしいな。
女としての自信なんて全然ない私を、そういう対象として見てくれたこと。頑張って浴衣を着てよかった……。