契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~

恥ずかしさと幸福が入り交じって、苦しいほどの胸の高鳴りを感じていると、そっと体を離した彼が、私の後頭部に手を添えて軽く額にキスをする。

それから、至近距離で私の瞳を覗き込んで言った。

「似合ってるよ、結奈。すごく色っぽい」

ストレートな褒め言葉に、きゅうっと胸が締め付けられた。

彰さん、どうして今日に限ってそんなに私を喜ばせることばかり言うの?

これ以上好きにさせないでよ……。

「ありがとうございます」

なんとか笑顔を作り、消え入りそうな声でお礼を言った。

胸が高鳴れば高鳴るほど、同じくらいの切なさが私の胸を押しつぶす。

それでも、今日は彼の隣で一緒に花火を見て、二人の思い出を作りたいって気持ちに変わりはない。

彼の瞳がほかの誰に向いていようと、私は私の気持ちをちゃんと伝えるって決めたから。





花火大会の行われる臨海地区まではタクシーで向かい、同じく花火目的の人々の姿がちらほら見えるようになったころ、私たちは車を降りた。

彰さんに手を惹かれて歩いていくと、会場に近づくにつれ小さな屋台の姿も次々現れ、美味しそうな香りが周囲に漂い始める。



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