契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~

ひとりで意気消沈していると、毬亜さんが一歩私に近づいて人懐っこい笑みを向けてひとこと。

「彰がいつもお世話になっています」

まるで、彼女の方が家族だとでも言わんばかりの自然な挨拶。

これは、宣戦布告なのだろうか。でも、彰さんの妻は私だよ……?

悶々として微妙な会釈しか返せない私に、彰さんが彼女を紹介する。

「彼女は叶夢の妹の毬亜だ。vanillaでパティシエをしている」

「パティシエ……」

こんなに痩せててかわいくて、おまけに手に職があるだなんて。食べることしか能がない私とは大違いだ……。彼女に対する敗北感ばかりが、胸に降り積もる。

自然とうつむいてしまう私に、平川さんがふとこんな質問を投げかけた。

「……ねえ結奈、あのあと本当に餃子も食べたの?」

餃子……? あれ、そういえばどうしたっけ。寝室に置きっぱなしにしていたような気がするけど、今朝起きた時にはなかったような。

のんびり記憶をたどっていたその時、彰さんが厳しい口調で言う。

「どうしてお前が餃子のことを知っている」

あっ……。やばい。彰さんは、ゆうべ私がご飯を食べていた相手を平川さんだとは思ってないのに……!



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