契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
今日は、楽しい思い出を作るはずだったのに最悪の思い出になってしまった。自分から、壊してしまった。
でも、好きだから耐えられなかったんだよ。
彰さんがほかの誰かを見ていると知って、平気な顔をしてそばにいられるほど、私は強くない――。
張り裂けそうな胸の痛みを抱えながら、私は会場の逆方向へと夢中で走り続けた。
けれど、人の流れに押し戻されそうになったり、慣れない下駄のせいで足が痛くなったり、思うようには進めない。
やがて疲労に負け、近くにあった花壇のふちに腰かけて休むことにした。顔を上げると、目の前を幸せそうなカップルばかりが通り過ぎていく。
じわっと目尻に涙が浮かび、私は足元に視線を落とした。
「あ……血が」
すると、鼻緒でこすれた親指と人差し指の間が、痛々しい擦り傷になっているのに気づく。
夢中で走っているときは大丈夫だったのに、今になってずきずき痛み出す。
私はこれ以上傷が深くならないよう、下駄を脱いでその上に素足を置いた。