契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
「結奈。二人きりになれる場所に行こう」
「えっ? ……きゃ!」
その意味を考えている間に、彰さんの手が私のひざ裏と背中に回され、体をひょいと抱えあげられてしまった。
落ちないように、とっさに彼の首にしがみつきながら軽くパニックに陥る。
こ……これはもしやお姫様抱っこ!?
「あの、彰さんっ。無理しないでください! 私、重いんですから腰やられますって!」
私の足をかばうためなのだろうけど、この抱き方は痩せている人限定でするべきです!
申し訳なさ過ぎて思わず足をばたつかせるけれど、彰さんは平然と言う。
「自分の妻を抱きかかえる腕力すらないほど、俺は頼りない男じゃない。それに、お前が言うより重くないよ。余計な心配するな」
「……はい」
きゅうう、と、胸が性懲りもなくときめいた。というか、こんなことされて、ときめくなという方が無理でしょ……。
私は胸が熱くなるのを感じながら、おとなしく彼に抱かれる。
心地よい揺れと彼のぬくもりに浸りながら大通りまでくると、彰さんがそっと私を下ろして通りがかったタクシーを止めた。