契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~

「結奈。二人きりになれる場所に行こう」

「えっ? ……きゃ!」

その意味を考えている間に、彰さんの手が私のひざ裏と背中に回され、体をひょいと抱えあげられてしまった。

落ちないように、とっさに彼の首にしがみつきながら軽くパニックに陥る。

こ……これはもしやお姫様抱っこ!?

「あの、彰さんっ。無理しないでください! 私、重いんですから腰やられますって!」

私の足をかばうためなのだろうけど、この抱き方は痩せている人限定でするべきです!

申し訳なさ過ぎて思わず足をばたつかせるけれど、彰さんは平然と言う。

「自分の妻を抱きかかえる腕力すらないほど、俺は頼りない男じゃない。それに、お前が言うより重くないよ。余計な心配するな」

「……はい」

きゅうう、と、胸が性懲りもなくときめいた。というか、こんなことされて、ときめくなという方が無理でしょ……。

私は胸が熱くなるのを感じながら、おとなしく彼に抱かれる。

心地よい揺れと彼のぬくもりに浸りながら大通りまでくると、彰さんがそっと私を下ろして通りがかったタクシーを止めた。



< 150 / 244 >

この作品をシェア

pagetop