契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
「道重堂の本社ビルまで」
車に乗り込んだ彼が運転手に告げたのは、自分の会社。
そんな場所に連れていかれるとは予想していなかったので、彰さんの意図がわからず困惑する。二人きりになるなら、このまま自宅に帰ればよかったのでは……?
その後、花火大会による人出の多さもあり何度か渋滞があったけれど、三十分弱で目的地に到着した。
初めて目にする道重堂本社は現代的なガラス張りの高層ビルで、その立派なたたずまいを思わずじっくり見上げてしまう。
彰さん、こんなにすごい会社のトップなのか……。普段はそこまで噛みしめることのない彼のハイスペックさを、改めてひしひし感じた。
「行こう、結奈。足はまだ痛むか?」
「い、いえっ! もう大丈夫です!」
多少は痛むけれど、それを言ったらまた恥ずかしい抱えられ方をしそうだから、平気なふりをする。けれど彰さんはそんな私の強がりもお見通しで。
「無理するな。さっきのが嫌なら、俺の腕に掴まれ。それくらいならいいだろ?」
「……ありがとうございます」
素直にお礼お言って、遠慮がちに腕をつかませてもらった。