契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
「ここが、お前と二人きりになれて……なおかつ花火が見られる場所だからだ」
「花火……?」
先程までいた会場のそばはわりとひらけていたけれど、この周辺は高層ビルばかり。建物が邪魔して花火なんか見えないと思うんだけれど。
なかなか頭の中の疑問符が消えない私に、彰さんは説明をあきらめたように言う。
「ま、行ってみればわかる」
間もなくエレベーターが到着し、私たちは二人で乗り込んだ。
*
「す、すごい! 見えるって……まさかの上から!?」
現在地、道重堂本社の三十階、社長室。――彰さんの部屋だ。
その広い窓から見える景色を目の当たりにした私は、足の痛みを感じないほど興奮していた。
目の前に広がるのは、宝石を散りばめたような都会の夜景。
そして彼の言った通り、臨海地区で打ち上げられている花火を、見下ろす形で堪能できる絶好の場所だった。
部屋の照明をつけなくてちょうどいいほど鮮やかで明るい光が、次々弾けては消えていく。
「下から見るより花火がずっと立体的に見える……初めてです。こんなの」
「気にいったか?」
そう聞きながら、彰さんが窓にへばりつく私の隣に並ぶ。私はもちろん満面の笑みを返した。