契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~

「ここが、お前と二人きりになれて……なおかつ花火が見られる場所だからだ」

「花火……?」

先程までいた会場のそばはわりとひらけていたけれど、この周辺は高層ビルばかり。建物が邪魔して花火なんか見えないと思うんだけれど。

なかなか頭の中の疑問符が消えない私に、彰さんは説明をあきらめたように言う。

「ま、行ってみればわかる」

間もなくエレベーターが到着し、私たちは二人で乗り込んだ。





「す、すごい! 見えるって……まさかの上から!?」

現在地、道重堂本社の三十階、社長室。――彰さんの部屋だ。

その広い窓から見える景色を目の当たりにした私は、足の痛みを感じないほど興奮していた。

目の前に広がるのは、宝石を散りばめたような都会の夜景。

そして彼の言った通り、臨海地区で打ち上げられている花火を、見下ろす形で堪能できる絶好の場所だった。

部屋の照明をつけなくてちょうどいいほど鮮やかで明るい光が、次々弾けては消えていく。

「下から見るより花火がずっと立体的に見える……初めてです。こんなの」

「気にいったか?」

そう聞きながら、彰さんが窓にへばりつく私の隣に並ぶ。私はもちろん満面の笑みを返した。



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