契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
「結奈……」
上擦った声に名前を呼ばれ、もどかしい愛撫を繰り返されながら思う。
彰さんは、どうしてこんなに性急に私を求めるのだろう。
毬亜さんとのことをはぐらかすため? ……ううん、そんな雰囲気じゃない。
理由をあれこれ考え、ある考えに行きつく。
私を安心させるだなんてきっと口実で、本当は、彼自身が抱える心の隙間を埋めようとしているんじゃないのかな。
だとしたら、私は……。
「彰さん」
私は優しく彼を呼んで、胸元にある彼の顔をのぞきこむ。
彼はぴたりと動作を止めて手首の拘束を解くと、前に葉山の海でも見せたことのある、迷子のような瞳で私を見つめた。
その頼りなげな視線にぎゅっと胸が締め付けられ、私はある感情を強く抱いた。
もしも……あなたが私を抱くことで心が救われるのなら、この身を差し出しても構わない。
それほど、あなたは愛しい存在なんです。彰さん……。
しばらく無言で彼と見つめあった後、私はその覚悟を伝えるため、口を開いた。