契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
「すっかり期待しちゃってました……。あなたに抱かれること」
言ってから、すさまじい照れに襲われて、抱えた膝に顔をうずめる。
こんなこと、起きていたら絶対に言えないよ……。ああ恥ずかしい。
それからちら、と視線を上げて、彼の美しい寝顔をじっと見つめる。
綺麗な鼻筋……寝ているのにきりっとした凛々しい眉。睫毛も羨ましいくらい長くて……。
無意識に顔を近づけていた私は、そのまま吸い寄せられるように、彼の唇に自分の唇を重ねた。
触れるか触れないかの、羽根のように軽いキス。
それでも、寝ている夫の唇を奪うなんて、なんとなく悪いことをしたような気分だった。
居たたまれなくなった私はそのあとすぐにリビングの照明を落とし、逃げるように寝室へ向かった。
すぐにベッドに入って布団をかぶり、鳴りやまないドキドキを全身で感じる。
なんか、変だ……今日の私。まさか、欲求不満?
男の人の寝顔を見て〝キスしたい〟って思うなんて。
焦らないって決めたばかりなのに、私、彰さんに対してだんだん欲張りになっている。
こんな気持ちを持て余したままで、彼と一緒に暮らしていたらどうにかなりそう――。
その夜の私はなかなか落ち着くことができず、寝るまでにかなりの時間を要したのだった。