契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
12.旦那様の苦手なもの
花火大会の日から、早一か月。九月下旬になり残暑も落ち着いたというのに、私はすこぶる調子が悪かった。
「先輩、最近痩せたんじゃないんですか?ほら、これでも食べて元気出してください!」
昼休みを迎えたにも関わらず、ぼうっとしてデスクの前から動こうとしない私に、花ちゃんがお菓子を差し出してくれた。
「ああ、花ちゃん……ありがとね。後でいただく……」
私は生気のない顔で、かわいらしい個包装の八つ橋を受け取った。花ちゃんは先週の三連休を使って彼氏と京都旅行に行ったらしく、そのお土産だ。
いつもならすぐに食べるところだけれど、そんな気分ではない。
全体的に食に関する興味が薄れていて、日課にしていたブログの更新も近頃はお休みしている。
「結奈先輩が甘いものを〝後で〟って……! ただごとじゃないです! 旦那様と何かあったんですか!?」
その問いに、私は乾いた笑いを漏らして答える。