契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
仕事のことだとわかり、私は頭を切り替えた。
ものすごく多忙な平川さんは予定にまったく隙がなく、任されたインタビュー企画を進められずに困っていたのだ。
「どこか食事したいお店の候補はありますか?」
すぐに出かける準備をしながら尋ねると、彼は自信たっぷりな笑みを浮かべていった。
「せっかくだから、俺の店に招待するよ。その方が、仕事の話も伝わりやすいだろうし」
「……と、いうことは。もしかして、あのなかなか予約が取れないスイーツバイキングに? 私、まだ行ったことなかったんです!」
途端にきらりと瞳を輝かせた私に、平川さんはサラッとすごいことを言う。
「なんだ、結奈ならいつでもVIP席に通せって言っておくのに」
「VIP……! いや、彰さんはともかく私はそんなすごいお客じゃないんですが」
特別扱いに恐縮すると、平川さんが突然冷たい口調になる。
「何言ってんの。彰なんか門前払いだよ。俺が来てほしいのは結奈だけ」
「え……」
彰さんの名前が出た途端、あからさまに一変した彼の態度に思わず固まってしまう。
久々に会うから忘れていたけれど、彼の彰さんに対する敵意は、相変わらずみたい……。