契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
私は記事のために何枚か写真を撮りながら平川さんの後に続き、一般客がスイーツバイキングを楽しんでいるホールではなく、奥まった個室へと案内された。
たぶん、さっき言っていたVIP席というやつだろう。
私はそこで彼と向き合い、従業員がいくつか運んできたゆめかわスイーツの数々を前に、ICレコーダーのスイッチを入れてさっそくインタビューを開始した。
「東京には様々な人気洋菓子店がひしめく中、vanillaがここまで知名度を上げた理由を社長はどのようにお考えですか?」
「そうだなぁ。新しく手掛けたこの店なんかは、わりと若い子向けだから価格設定も手頃なんだけど、基本的にうちの店は〝洋菓子界のハイブランド〟を目指して、一個千円とか二千円の高級ケーキを売りにしているわけ。それが一部の富裕層に受けて、手土産の定番にしてもらえたからかな」
……そ、そんなに高価だったっけ、vanillaのケーキ。
食べたことはあるけれど、貰い物だったのかな。値段のことはあまり印象になかったので、ちょっと驚いてしまう。