契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~

「それはホールケーキではなく、一切れでその値段なんですか?」

「もちろん。それから見た目もなるべく派手に、を心がけてる。フルーツやチョコレート、砂糖菓子を宝石のように散りばめて、写真を撮らずにはいられないようにね。SNS社会にうまく乗っかるのが、今は最強の宣伝方法だから」

「なるほど」

今テーブルに並んでいるロールケーキやマカロンも、思わず写真に撮りたくなる可愛さだ。

さすがは平川さん、vanillaをここまで話題性のある店にしただけのことはある。

彼のやり方に賛同できるかは別として、経営手腕はなかなかのようだ。

感心しながら、次の質問に移ろうと手元の資料を確認し始めた時、平川さんが不意に話し出した。

「それに比べて、和菓子ってのは古臭いし貧乏くさいよね。もらっても心が浮き立つ感じがないっていうのかな? 俺、キライなんだよねー和菓子。まぁだから、自分は洋菓子業界を選んだわけだけど」

聞いてもいない、和菓子に対する主観的な悪口を並べ立てる彼に、私は思わずICレコーダーを止める。



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