契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
「ちょっと、平川さん……なんなんですか、急に」
「別に、思ってること言っただけだよ。結奈の顔見てると、いやでもあの裏切り者の彰を思い出すから、急に腹立ってきてさ」
裏切り者とか、道重堂を潰すとか……。平川さんはどうして彰さんにそんな負の感情ばかり抱くようになったの?
「あのっ」
前にその事情を〝彰本人に聞いてみろ〟と言われたけれど、その彰さんがいつまで経っても話してくれる様子がない。
だからって、平川さんに聞いてしまうのはルール違反だろうか。
……でも、私だって黙って待つのはもう限界なの。
それに話を聞けば、私でも彰さんのためにできることがあるかもしれないじゃない。
彰さんがいつまでも何かに縛られているのは、誰にも頼らずたったひとりで思い悩んでいるからなんじゃないの……?
私はそんな思いから、意を決して平川さんに質問した。
「教えてくれませんか? あなたと彰さんの間に何があったのか……全部」
「なんだ。まだ彰から教えてもらってないの?」
「はい。……何度か聞いたんですけど、もう少し待ってと言われるだけで」
そしてそれが、歯がゆくてたまらないのだ。