契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
しかし、パッケージを開いていざ食べようと思っても……やっぱり、それを口に入れる勇気が出ず、結奈に食べさせることになってしまった。
「……昔は、食べられたんだろう? なんで急に一口も受け付けなくなったんだ? 毎日お前に付き合って、いろいろと試行錯誤してる俺には、そろそろ教えてくれていいんじゃないのか?」
倉田が腕組みをしながら壁にもたれ、俺の表情をうかがう。
そうだな……。歳は離れているが、いつも兄のように俺を気にかけてくれて、俺の餡子嫌いにも、親身に向き合ってくれる倉田。
両親にも結奈にも、その苦手意識の理由を話したことはないが、この人なら勝手に口外したりしないだろう。
「わかりました。少し、長くなりますが……」
俺はそう前置きをしてから、遠い昔に思いを馳せてゆっくり語り始めた。
餡子嫌いのことだけじゃなく、今の俺――道重彰という人間をつくった、そのルーツを。