契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
「そういえば社長。今、あの倉田さんがニコニコしながら雑誌のインタビューを受けてるんですよ」
「倉田が……?」
長い付き合いの俺とは普通に話す彼だが、基本的に彼は無口で気難しい根っからの和菓子職人。そんな倉田がニコニコしている顔なんて、俺でもほとんど見たことがない。
それも、雑誌のインタビューでというのが信じられない。
いったいどんな相手と話しているんだ……?
興味を惹かれた俺は、インタビューが行われているというカフェスペースの方へと出向いて、遠くからインタビューの様子を眺めた。
インタビュアーは女性で、耳を澄ませて会話を拾うと、倉田が彼女についてべた褒めしていた。どうやら彼女は和菓子に詳しく、道重堂の菓子に対する愛情も強いらしい。
倉田にここまで言わせるとはよほどの和菓子好きと見える。
俺は感心しながら、視線を女性の方へ移した。
髪型は、ふわっとパーマがかかった、明るいブラウンのセミロングヘア。
柔らかそうな丸顔の中に、愛嬌たっぷりの大きな瞳が楽しそうに輝き、口元は常に口角が上がった状態で、とにかく愛想のいい印象を受ける。