契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
俺はそのとき結奈を〝利用価値のある女〟としか見ていなかったが、めったに出会えない逸材だとも思っていた。
なので、絶対に逃してなるものかという執念のもと、嘘を並べ立てて婚姻届けにサインさせた。
……夫婦になってしまえば、こっちのものだ。そんな身勝手なことを思って。
そして、完全に結奈の気持ちなど無視して籍を入れ、倉田や両親にも早々と紹介を済ませてしまえば、これで面倒な仕事が終わったと胸をなでおろした。
俺にとって大事だったのは〝結婚した〟という事実だけで、その先のビジョンは特に持っていなかったのだ。
けれど、無邪気で素直で、ひとよりちょっと食いしん坊。そのせいか若干ぽっちゃり体型で、それを気にしつつも食欲に勝てない、本能に忠実な結奈。
そんな、女性特有の計算高い部分など全くない彼女とともに日々を過ごすうちに、俺に心境の変化が訪れてきた。