契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~

 * * *


「……そういうことがあったんなら、なおさら無理することないんじゃないか?」

俺の長きにわたる昔話を黙って聞いていた倉田が、心配したように言う。おそらく俺の精神的なダメージを考慮してくれているのだろう。

「いや……無理をしているのは俺だけじゃないんだ。結奈にも、かなり無理をさせている。俺がハッキリしないせいで泣かせてしまったし……飲み込んでいる感情がいくつもあると思うんだ」

印象的だったのは、あの花火大会の夜。

彼女の知りたいことを曖昧に濁し、自分の欲だけをぶつけるように、強引に彼女の肌に触れた。

冷静に考えれば、軽蔑され、平手打ちのひとつをされても仕方のない状況だったと思う。

しかし、結奈はそんな俺をありのまま受け入れようとしてくれた。

自分がつらいのを押し隠して……俺の心を楽にさせようと、必死に心を砕いてくれた。

俺は、その深い愛情に応えたいんだ……。

胸の内で宣言し、改めて餡子の入ったボールを見つめたそのときだった。



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