契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
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「……そういうことがあったんなら、なおさら無理することないんじゃないか?」
俺の長きにわたる昔話を黙って聞いていた倉田が、心配したように言う。おそらく俺の精神的なダメージを考慮してくれているのだろう。
「いや……無理をしているのは俺だけじゃないんだ。結奈にも、かなり無理をさせている。俺がハッキリしないせいで泣かせてしまったし……飲み込んでいる感情がいくつもあると思うんだ」
印象的だったのは、あの花火大会の夜。
彼女の知りたいことを曖昧に濁し、自分の欲だけをぶつけるように、強引に彼女の肌に触れた。
冷静に考えれば、軽蔑され、平手打ちのひとつをされても仕方のない状況だったと思う。
しかし、結奈はそんな俺をありのまま受け入れようとしてくれた。
自分がつらいのを押し隠して……俺の心を楽にさせようと、必死に心を砕いてくれた。
俺は、その深い愛情に応えたいんだ……。
胸の内で宣言し、改めて餡子の入ったボールを見つめたそのときだった。