契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
今まで俺は、初めて恋をした相手――結奈に、自分の弱い部分やカッコ悪い部分はできるだけ見せたくないと思っていた。
同時に、彼女の不安を取り除くには、自分が強くなるしか方法はないと思っていた。
頼るとか、助けてもらうとか……そんな発想は全くなくて、けれど彼女は、そんな俺に腹を立てていたんだ。
俺たちは、夫婦であり、家族。必要があれば寄りかかっていい存在なのだと、結奈は今、必死で俺に伝えているんだ。
俺は彼女のもとへゆっくり歩み寄り、手のひらで涙をぬぐう彼女の小さな体をそっと抱き寄せた。
やわらかくて、あたたかくて、胸の奥を疼かせる、誰より愛しい俺の妻。
なのに、こんなふうに泣かせてゴメンな……。
俺は心の中でそう詫びるのと同時に、これからは、彼女の前でできるだけ素直になることを決意する。
「ありがとう、結奈……俺、お前に助けてもらいたいことがあるよ」
ようやく正直に救いを求めると、結奈は泣き顔のまま、優しく微笑んでくれた。