契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~

「そこで、昔の話を聞きました。……彼、あのときは胸がスッとして、ざまあみろと思ったそうです。でも、まさかあれから二十年以上たった今でも、そのことが彰さんのトラウマになっているとは思いもしなかったって言っていました。それと」

彼の行動が彰さんの中でここまで尾を引いていると知って、平川さんは動揺をにじませていた。

それから彼らしくない、苦悩に満ちた表情でこう言ったのだ。

「行き過ぎた悪戯だった。……彰さんに、そう伝えてほしいと頼まれました」

「……本当か? 叶夢が、そう言ったのか?」

にわかに信じられな様子で、彰さんが私に問いかける。

「はい。それに、道重堂を潰すのも……今までは、どんな非道な手段を使ってでも叶えようとしていたけど、正々堂々と、企業としての魅力で勝負するって」

平川さんの新たな宣戦布告に、彰さんの目が、大きく見開かれる。

その瞳には光が戻り、彼の心の中で凍り付いていた部分が解け始めているのを感じた。



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