契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~
「ありがとう。結奈がいなければ、絶対に無理だった。お前は本当に、最高の妻だ」
「……そ、それほどではないですけど」
褒められすぎて照れる私の頬に、彰さんが優しく大きな手を添える。それから、私の唇に親指をツツっと滑らせ、妖艶に細めた目で私を射抜いた。
「さっきの口移し、正直ドキドキしたよ。でも、お前の唇が一瞬で離れていったから、物足りない。……もっと、結奈を味わいたい」
熱っぽい掠れ声で囁かれる甘い言葉に、否応なく胸が高鳴る。
もしかして彰さん、トラウマを克服したことでいつもより積極的になっていらっしゃる……?
そんな予感に頭がくらくらして、彼の顔が近づいてくるのを身動きもできずに待っていた時だった。
「おーい、それ、家に帰ってからやってくれないか?」
倉田さんの呆れ果てた声が、私たちを甘い空気から引きずり出した。私はパッと彰さんから離れ、熱い頬を両手ではさんで冷やす。
そういえば、倉田さんがいたことすっかり忘れてた……。