契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~

「もう少し黙って見ていてくれてもよかったのに」

不服そうな彰さんは、彼に見られているのを知っていてあんな行動に出ていたらしい。

やっぱり彼、なんだか積極性が増した気がするのですが……。

「嫌だよ。こちとら長年和菓子一筋で、この歳になっても寂しい独身男なんだ。若いもんがいちゃつく姿なんか見た日にゃ孤独に涙しながらやけ酒だ。……まぁ、でも」

途中まで苦言をこぼしていた彼が、組んでいた腕を解いて晴れやかな顔を彰さんに向けた。

「よかったな。俺はお前が長年苦しんでいるのを見てきたから、自分のことのようにうれしいよ。本当の幸せはこれからだな」

「はい。ありがとうございます」

倉田さんが励ますように彼の肩を肩をポンと叩くと、彰さんも頼もしい笑顔で応えていた。

ふたりの和やかなムードに、私も胸が温かくなった。


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