契約新婚～強引社長は若奥様を甘やかしすぎる～

私の勤める美郷出版は新橋にあり、オフィスビルのワンフロアを借りている、小さな出版社。

主にグルメブックや、日本各地のガイドブックを手掛けていて、私は面接の際に一発で〝グルメ枠〟に採用になった。

その理由を会社に聞いたことはないけれど、自分では絶対に体型のせいだと思っている。

わりと新しい会社で、新進気鋭といえば聞こえはいいけれど、要は貧乏な中小企業。

オフィスビルは古くて大したセキュリティもないから外部の人間も入り放題だし、カメラマンやライターを雇う余裕がないため、人使いが荒い。先日の道重堂の取材を私一人で行ったのもそのせいだ。

こんなに一生懸命働いているんだから、もうちょっと痩せてもいいと思うんだけど……勤め始めて六年目にさしかかった現在も、私のぽっちゃり体型はずっと維持されている。

いったい、なぜなの。

「結奈せんぱぁい、お昼行きましょ～」

道重堂に取材をした翌週の金曜日のこと。

昼休みを迎えたオフィスで、同じ部署に勤務する後輩、森田花(もりたはな)ちゃんにランチに誘われた。