契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~

「まぁ、今の仕事もあるしすぐにとはいかないだろうから、じっくり考えてみてほしい。あと、これから言うことは社長としてでなく、お前の夫としての正直な気持ちなんだけど」

彰さんはそう前置きをした後、愛情深い眼差しで私を見つめた。

「たとえ仕事でも、結奈を手の届く範囲に置いておきたい……そんなエゴもあってな」

「彰さん……」

彼が珍しく垣間見せた独占欲に、胸がドキンとなった。

出会ったばかりのころはあれほど〝恋愛感情はない〟と言っていたのに、今ではこんなにも妻を溺愛する夫に豹変してしまったなんて。

意外な姿だけれど、ここまで愛されて嬉しくないわけがない。

私は彼に微笑みかけ、自分の意思を告げる。

「私、前向きに検討します。すごく魅力的なお仕事だと思うし、道重堂の社員になれば、いつでもあなたのそばにいられるみたいで、安心できそうだから……」

「今だって、俺の心はいつでも結奈のそばにあるよ。……もちろん、これからも永遠にだ」

誓いのような言葉に、胸がじーんとあたたかくなる。

「私……あなたの妻になれて幸せです」

「あまり可愛いことを言うな。もう一度抱きたくなる」

彰さんは苦笑しながらそう言って、私の唇に優しいキスを落として言った。

「でも明日の仕事にお互い差し障るからな。……今夜はおやすみ、結奈」

「はい。おやすみなさい、彰さん」

心地よい疲れと、彼の穏やかな声色がすぐに眠気を誘い、私は満ち足りた気持ちで眠りについた。


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