契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~

今回も微妙な笑顔を貼り付けたまま、「そうだよねえ」なんて心にもない相槌を打つ。

そうこうしているうちに行列は進み、私たちも無事店内に入ることができた。がやがやとにぎわう店内は、揚げ物やみそ汁のいい香りが充満していて、食欲をそそられる。

「何にしようかなぁ」

「先輩は、ささみと大葉のヘルシーチキンカツがいいと思います」

「えっ。大判ロースカツ、ダメ? 食後に宇治金時もつけたいんだけど」

「ふふっ。どんだけ食べるんですか。冗談ですから、好きにしてください」

きつい物言いもする花ちゃんだけど、そうやって笑うとまさに花のようにきれい。

きっと、彼氏に大事にされてるんだろうなぁ……。遠い目で彼女のキラキラ輝くオーラを眺めつつ、私はちゃっかり大判ロースカツ定食をオーダーした。

恋する乙女の花ちゃんは今夜のデートのことを思うと胸がいっぱいらしく、さばの塩焼き定食だなんて弱気な料理を頼んでいた。

やがて運ばれてきた大判ロースカツは、その名の通りお皿からはみ出んばかりの大きさ。からっときつね色に揚がり、断面からは肉汁がきらきらと溢れていてテンションが上がった。

一番好きなものと言われたら和菓子だけど、とにかく食べることが好きな私は揚げ物だって大好きなのだ。


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