契約新婚~強引社長は若奥様を甘やかしすぎる~

「え、ええと……柏木食品です。秋田のお店なんですが、好みの味なので、ちょくちょくお取り寄せしてて」

たどたどしく説明した私に、彰さんは微かに口角を上げて、とんでもない発言をする。

「さすがは俺の嫁だな。やはり、確かな味覚を持っている」

よ、嫁……? それはさすがに気が早いというか、そもそも偽物の婚約者なんですけど。

そう突っ込みたかったけれど、味覚を褒められて悪い気はせず、特に否定しないまま「ど、どうも……」なんて照れ笑いをする私。

「ああ……ダメだ。私、白昼夢を見ているようです……お先に、失礼します」

顔色の悪い花ちゃんはふらふらと私たちの元を離れ、帰り支度を済ませると、さっさとオフィスを出て行ってしまった。

あらら……花ちゃん、とうとうこの非現実的すぎる光景に、耐えられなくなったか。

本当は彰さんのことを誰かに話すつもりはなかったけれど、花ちゃんには事情を話してあげないと、彼女どうにかなっちゃいそう。

私自身が、こんなイケメンのお側にいること、未だに信じられないし……。



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